“老老介護”といわれる現在の状況では、
介護の現場における高齢化は益々深刻化しています。
生産年齢人口が大きく減少するといわれる中で、介護へ回す余力は社会的に困難となり、このままでは社会体制の不安定化、脆弱化が加速されると予測されています。
今後の社会体制を考えたときに、高齢者向け施設を利用する人でも、できるだけ“自立”した生活を送る必要に迫られ、それを支援するためのモノ・サービスが必要になると私たちは考えています。
そこで、「介護される側」の自立性を促す製品の開発が不可欠だと考え、当社では「高齢者向け衣料」の開発に着手しました。
開発当初、着目したのは衣服が起因として起こる転倒事故やトラブルが非常に多いと感じた点です。
介護中の怪我や事故は、介護する側・される側、その家族やサービス提供施設などにとっても大きなリスクといえます。
自立性を促す上で、問題となるのが
積極的な行動で起きる転倒などのトラブルです。
自立歩行での移動、着替え、トイレやお風呂などでの脱衣時の転倒など衣服にまつわるトラブルも多く、こういった事故を軽減するためには身に纏う衣料で起こるリスク低減が必要と考えます。
また、衣服に関わるトラブルとしては、サイズの不一致やゴム紐などによる締め付け、それによる血行不良や皮膚のトラブルなどがあります。
さらに体温調整が上手くできないなどにより、低体温や熱中症などの命に関わるような事例も衣服のトラブルに起因することが多く見られます。
“どんな人にも使いやすい”ユニバーサルデザインでなく、
「現場」で困る方にとって必要な機能がきちんと備わっていることが
何よりも重要だと考えます。
今後は病院、介護施設の体制も変化し介護される人だけでなく、ケガや身体的障害など病院での治療や療養といった時間も短縮が予想され、在宅での療養が必要になってくると見込まれます。
高齢者向けの衣料として開発を進めてきましたが、高齢者だけでなく治療やリハビリ、身体的障害など身体に不自由がある人、妊娠している方が安全・安心な日常生活を送るための衣料は普段使用している着衣でなく、
①脱ぎ着する際
②行動する際
③寝起きする際においての配慮
④肌触り・体温調整・締め付け具合
などへの配慮が必要不可欠になると考えます。
普段のホームウエアではなく、配慮された衣料を活用して、どんな方にも快適に自立した日々をお過ごしいただけるようになればと開発をおこなっています。
ナースあいでは、現役の訪問看護師が、
医療・看護・介護の現場と開発フィールドを往き来して、
「本当に現場で使える製品」開発をおこなっています。
本当に現場が求めるものは何か。
まずは現状の問題点の洗い出し、正確な解剖、皮膚の硬さ、血管の位置や弾力、逆血のリアルさ、見えないところ・注意点の可視化、耐久性、使用される現場の現状、最新の医療情報等々細部にわたりこだわって開発しています。
それぞれの専門家の先生方と、医療・看護・介護の現場の最前線で取り組む方々、素材・製造業の皆様と意義の共有をしながら何度も何度も試作を繰り返し、しっかり向き合い創りあげています。
介護の現場では、手作りの「アイデア品」により問題の改善に繋がることがあります。しかしながら、単なる“思いつきの品”だけでは本当に“現場で役立つ器具”として広める訳にはいきません。 多分野でご活躍される大学の先生方との協同研究によりデータを構築し、再現性を確認・分析することで、エビデンスの確かな製品づくりをおこなっています。
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